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吾輩は猫である_十 - 9

夏目漱石
日语读物
总共148章(已完结

吾輩は猫である 精彩片段:

十 - 9

「あのね。坊たん、坊たん、どこ行くのって」

「面白いのね。それから?」

「わたちは田圃(たんぼ)へ稲刈いに」

「そう、よく知ってる事」

「御前がくうと邪魔(だま)になる」

「あら、くうとじゃないわ、くるとだわね」ととん子が口を出す。坊ばは相変らず「ばぶ」と一喝(いっかつ)して直ちに姉を辟易(へきえき)させる。しかし中途で口を出されたものだから、続きを忘れてしまって、あとが出て来ない。「坊ばちゃん、それぎりなの?」と雪江さんが聞く。

「あのね。あとでおならは御免(ごめん)だよ。ぷう、ぷうぷうって」

「ホホホホ、いやだ事、誰にそんな事を、教わったの?」

「御三(おたん)に」

「わるい御三(おさん)ね、そんな事を教えて」と妻君は苦笑をしていたが「さあ今度は雪江さんの番だ。坊やはおとなしく聞いているのですよ」と云うと、さすがの暴君も納得(なっとく)したと見えて、それぎり当分の間は沈黙した。

「八木先生の演説はこんなのよ」と雪江さんがとうとう口を切った。「昔ある辻(つじ)の真中に大きな石地蔵があったんですってね。ところがそこがあいにく馬や車が通る大変賑(にぎ)やかな場所だもんだから邪魔になって仕様がないんでね、町内のものが大勢寄って、相談をして、どうしてこの石地蔵を隅の方へ片づけたらよかろうって考えたんですって」

「そりゃ本当にあった話なの?」

「どうですか、そんな事は何ともおっしゃらなくってよ。――でみんながいろいろ相談をしたら、その町内で一番強い男が、そりゃ訳はありません、わたしがきっと片づけて見せますって、一人でその辻へ行って、両肌(もろはだ)を抜いで汗を流して引っ張ったけれども、どうしても動かないんですって」

「よっぽど重い石地蔵なのね」

作品简介:

夏目漱石《我是猫》日文原版。

1867(慶応3年)、江戶牛込馬場下(現在新宿区喜久井町)に生れる。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、「吾輩は猫である」を発表し大評判となる。翌年には「坊っちゃん」「草枕」など次々と話題作を発表。’07年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

作者:夏目漱石

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