文学作品阅读

吾輩は猫である_十一 - 14

夏目漱石
日语读物
总共148章(已完结

吾輩は猫である 精彩片段:

十一 - 14

「飛んだ事になって来たね」と迷亭君が真面目にからかうあとに付いて、独仙君が「面白い境界(きょうがい)だ」と少しく感心したようすに見えた。

「もしこの状態が長くつづいたら、私はあすの朝まで、せっかくのヴァイオリンも弾かずに、茫(ぼん)やり一枚岩の上に坐ってたかも知れないです……」

「狐でもいる所かい」と東風君がきいた。

「こう云う具合で、自他の区別もなくなって、生きているか死んでいるか方角のつかない時に、突然後(うし)ろの古沼の奥でギャーと云う声がした。……」

「いよいよ出たね」

「その声が遠く反響を起して満山の秋の梢(こずえ)を、野分(のわき)と共に渡ったと思ったら、はっと我に帰った……」

「やっと安心した」と迷亭君が胸を撫(な)でおろす真似をする。

「大死一番(たいしいちばん)乾坤新(けんこんあらた)なり」と独仙君は目くばせをする。寒月君にはちっとも通じない。

「それから、我に帰ってあたりを見廻わすと、庚申山(こうしんやま)一面はしんとして、雨垂れほどの音もしない。はてな今の音は何だろうと考えた。人の声にしては鋭すぎるし、鳥の声にしては大き過ぎるし、猿の声にしては――この辺によもや猿はおるまい。何だろう?何だろうと云う問題が頭のなかに起ると、これを解釈しようと云うので今まで静まり返っていたやからが、紛然(ふんぜん)雑然(ざつぜん)糅然(じゅうぜん)としてあたかもコンノート殿下歓迎の当時における都人士狂乱の態度を以(もっ)て脳裏をかけ廻る。そのうちに総身(そうしん)の毛穴が急にあいて、焼酎(しょうちゅう)を吹きかけた毛脛(けずね)のように、勇気、胆力、分別、沈着などと号するお客様がすうすうと蒸発して行く。心臓が肋骨の下でステテコを踊り出す。両足が紙鳶(たこ)のうなりのように震動をはじめる。これはたまらん。いきなり、毛布(けっと)を頭からかぶって、ヴァイオリンを小脇に掻(か)い込んでひょろひょろと一枚岩を飛び下りて、一目散に山道八丁を麓(ふもと)の方へかけ下りて、宿へ帰って布団(ふとん)へくるまって寝てしまった。今考えてもあんな気味のわるかった事はないよ、東風君」

「それから」

「それでおしまいさ」

「ヴァイオリンは弾かないのかい」

「弾きたくっても、弾かれないじゃないか。ギャーだもの。君だってきっと弾かれないよ」

「何だか君の話は物足りないような気がする」

作品简介:

夏目漱石《我是猫》日文原版。

1867(慶応3年)、江戶牛込馬場下(現在新宿区喜久井町)に生れる。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、「吾輩は猫である」を発表し大評判となる。翌年には「坊っちゃん」「草枕」など次々と話題作を発表。’07年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

作者:夏目漱石

标签:吾輩は猫である夏目漱石

吾輩は猫である》最热门章节:
1八 - 122八 - 113八 - 104八 - 95八 - 86八 - 77八 - 68八 - 59八 - 410八 - 3